陽子との日々(43) 陽子に捧げた演奏
妻の陽子は、四歳の頃からピアノを習っていたそうです。
それで、私からのリクエストで坂本龍一さんの「Anna」という曲を弾いてもらったりするんですが、今日は私が「魔女宅」の曲を弾いて、陽子に採点してもらうことにしました。
左手と右手が独立して弾くことを要求される曲だと、私はお手上げですが、この曲は違うので、なんとか弾くことができます。
思い出しながらどうにかまとめたので、原曲の良さが失われ、プチアレンジのような状態になりましたが、それでも陽子は聴いてくれていました。
ウチはアコースティックピアノが無く、電子ピアノを一人一台ずつと、応接間に一台で計五台所有しているのですが、応接間ので弾いたんです。
弾き終えると陽子はパチパチと拍手してくれました。
でも、私が本当に聴いてほしかったのは、単なる演奏ではなく、この演奏に込めた陽子への想い、切なさなのでした。
幸い娘たちは友達の家に遊びに行っていて留守でしたから、普段からの陽子への想いをありったけ詰め込んだつもりです。
たとえばある人は、恋人に短い詩を送るかもしれない。
またある人は衣服や宝石をプレゼントするかもしれない。
でも私は陽子に、大好きな久石譲さんの曲を送りたかった・・・。
坂本龍一さんの「センメリのテーマ」も好きで、全部は弾けないんですが、よく弾いたりします。
その時も胸にあるのは、我が妻 陽子への愛、それだけなのでした。
※この物語はフィクションであり、実在の人物、団体などとは一切関係ありません。