当初は御両親の猛反対にあったそうですが、それは南野さんの確信と、お二人の考えが食い違ったことが原因だったのだと思います。

当時の南野家の様子を想像すると、南野さんの強い確信の理由がボンヤリと見えてきたんですよ。


陽子:「ねえお父さん・・・、あたし、この前大阪にテレビ収録の見学に行った時にね、ある芸能プロダクションの方にスカウトされたんやけど・・・」

英夫:「?・・・」

陽子:「それでいろいろ考えたんだけど、あたしも来年は3年だし、自分の進路を決めなきゃいけないでしょ? だからね、この前までは美大に行こうと決めてたんだけど、やっぱりね、あたしね、アイドルになりたいの・・・」

英夫:「ハハハハ・・・・・最近はそうやって若い娘に夢を持たせて上京させて、低賃金で働かせて使い捨てる業者がいるそうだから、陽子が会ったその人もきっとそうだぞ。そんな夢みたいな妄想をする暇があったら、さっき陽子が言った美大受験に向けて勉強しなさい。お父さんはアイドルになるなんて許さないぞ・・」

陽子:「でも、その芸能事務所の代表の方はピンクレディーの曲を作ってた都倉俊一先生なんだよ?お父さんもピンクレディー知ってるでしょ?あのミイちゃんとケイちゃんをスターにした人が責任を持ってくれるんだよ?だから絶対に大丈夫だと思うの・・。だからね・・・ いいでしょ?ダメ?」

英夫:「・・・・・そりゃ まあな、お父さんも陽子は南野家の姫だと思ってはいるぞ。でもな陽子、芸能界にはそれこそ全国から選ばれた娘さんたちがやってきてしのぎを削ってるんだ・・・。伊丹では通用しても、全国レベルでは通用せんだろう・・。お前より可愛い娘さんなんて星の数ほど居るんだ。悪いことは言わないから、考え直しなさい。お父さんはお前には大学に行ってイイ会社に就職して、真人間として生きてほしいんだ・・・。夢みたいな話しはもうよしなさい。」

陽子:「・・・じゃあね、お父さんとお母さんはなんであたしにピアノやバレエを習わせたの?宝塚歌劇団とか、芸能の道に進んでも大丈夫なようにっていうことじゃないの?」

英夫:「ハハハハ、ばかだな・・・あれは、女の子が生まれたら習わせようと決めてたんだよ。日本国憲法の一文に『すべて国民は、健康で文化的な、最低限度の生活を営む権利を有する』とあるだろ?そんな庶民の小さな夢の一つとして、お前がほかの家の娘さんと我が家の教育レベルを比べた時に、悲しまなくて済むように、最低限の嗜みとして、習わせたまでだよ。そんな、芸能人にしようなんて御大層な願いなんてまったくない。自分の娘に、してあげたいことをした・・・それだけさ」


久美子:「ねえ陽子、お母さんはね、陽子が生きたいように生きるのが1番いいと思ってるわよ・・。でもね、陽子はまだ若いから、知らないことが沢山あるでしょ?世の中のことがまだ分からないのに、お父さんが許可を与えると思う?お父さんもお母さんも陽子が心配だから、怖い目に遭ってほしくないから、反対するの。もっとよく考えてからでいいんじゃない?それからでも遅くないでしょ?」

陽子:「お母さんもお父さんと一緒ね・・・。もういいわ・・・あたしの人生はあたしが決める!」

英夫:「そんな、芸能人になれるヤツなんざ何十万人に一人だ!うまくいくわけあるか!」

陽子:「もういい!お父さんには頼まない!」


席を立ち、2階の自分の部屋に向かう陽子・・・。


久美子:「お父さん・・・」

英夫:「ほっとけ!」


こんな感じだったと思うんですよ・・・。


この後、都倉さんは南野家にお伺いして英夫さんと久美子さんに頭を下げ、「陽子さんの面倒は私が見ますのでご安心ください」みたいに言って、なんとかOKを取り付けたのだと思いますが、それでも英夫さんは心配で、東京のマンションに度々行っていたようです。


南野さんは一見、「可愛い」とか、「綺麗」などの外見に着目されがちですが、責任感が強かったり、優しいところがあったりなど、深い部分を持つ人なので、「できれば結婚してほしい」と思っていた男子は、結構多かったのではないかと思います。



参考資料

ファミリーヒストリー 南野陽子~先祖の姓はナンノ!笑顔と根性の原点~
南野陽子 - NHKプラス https://plus.nhk.jp/

日本国憲法第二十五条
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000003xfq-img/2r98520000003z9o.pdf

都倉俊一 - Wikipedia